はんぶんの内側

隙間産業的おたく活動記録 長文用

ジャニーズJr.で短歌を読んでみたこと

短歌結社「明星」の第二回歌会に参加させていただきました。今回のお題は「ジャニーズJr.」です。

短歌結社「明星」第二回歌会 お題:「ジャニーズJr.」 - こみねもすなるだいありー


第一回の歌会の記事を拝見して、感動でいてもたってもいられなくなり、意を決して参加させてください…!とお願いしました。


ひとまず私が詠んだもののねたばらしです。

言葉など持たないままでしらんぷり昨日まで見えたきみの横顔

昨日まで隣で踊っていたあいつがいなくて寂しい!であっても、大嫌いだった!いなくなって清々する!であったとしても、誰かがいなくなったことについてコメントすることは許されないから、何千何百のファンの何があったの、あの子はどこにいるの、という視線をただ知らんぷりするしかないという、ジレンマ。

きみじゃないターンの癖にもじき慣れるさスパンコールを踵で踏んだ

Jr.のグループやライン(と呼ばれるくくり)なんて曖昧で儚いものだから、ある日突然バラバラになったりするものだし、それに慣れていかなきゃいけないよなー、あっ、スパンコール落ちてる、誰の衣装だろ、みたいなことをステージ上で考えているのかなあ、という歌。
前の句とこれとは、辞めたでもただラインが分かれただけでもどっちでも解釈できるように詠みました。踏まれて割れるスパンコールに含みを持たせたかった。

いつの間に思い出せないあいつの目 逆光の旋毛モールの翼

いつも横並びで踊っていた奴が、どんどん推されて前に行って、現場も別々になって、いつの間にか会話も殆どしなくなったし、自分の立ち位置からは衣装の背中しか見えないしそれもなんだか逆光でよく見えないなあ、という歌。

特効の煙の匂いを覚えてる?あの夏まではきみがいた場所

五感のうち人間の記憶に最も残るのは嗅覚だと何かで読んだことがあるので。花火の音と煙、アセチレンの光に照らされてる今の君は、あの眩しい照明と特効の煙を覚えてるかな、とか夢想している。

付け替えた羽根の大きさが馴染まないけどこれはこれで悪くないよ、うん

これだけは明確にイメージした子がひとりいて、というよりも彼の載ったサタジャニの記事を読んでいたらぽろっと出てきた歌。あべあらんさんです。
もともと微妙に推されで(小さい翼を付けてもらって)はあったけど、ここ最近の爆推され(突然大きくて立派な翼に付け替えられた)で、戸惑ってるけど、ファンも増えたし将来に繋がるし活動の幅も広がるし皆いるし、楽しいよ!寂しくないよ!(ほんとはちょっとこわいよ、さびしいよ)という歌。
最後を「悪くはないよ」にしようと思っていたんだけど、うん、をつけて字余りになる気持ち悪さで無理矢理納得しようとしてる感じを出したかった。

眼差しも襟を触る癖も知ってる人魚のきみの声を知らない

そのまんま、どれほど大勢の中に居ても、たとえ仮面をつけて踊っていても、ちょっとした指先の伸ばし方や足のつき方の癖ですぐに見つけられるのに、マイクを持てないあの子達の声だけを知らない私達。
クリエやガムシャラではじめてソロの歌声を聞いて、こんな声してたんだ、と感動したり、プレゾンのサントラですぐに声の聞き分けが出来なくて、聞き分けられるようになるほど歌声を聞く機会が多くないもんなー、と思って悲しくなったりしました。

触れられぬ嘘の匂いで生かされている 熱をもつのはてのひらの恋

嘘は恋のことです。ステージの上と下には絶対に交わらない透明の分厚い壁があって、そのむこうから好きだよ!大好き!っていう甘い嘘をくれる、日常がどんなにしんどくてもそれだけで生きる理由になる。握った団扇は私達の恋心を具現化したもの。


短歌をよむのははじめてに近かったのですが、丁寧な講評をつけていただいて、そういう風に読めるのかー、と目から鱗だったり、特効の煙の〜に関しては私の発想とまったくおなじ花火大会を連想していただいて感動したり、誰かに自分の作品を読んでもらうのって嬉しいですね!調子に乗って沢山提出してしまったことは反省……次回はもう少し絞ります。

講評を読むまで気づかなかったんですが、私の詠んだ短歌は辞めジュ関係が多すぎる。完全に近況に拠るところです。短歌を詠みながら感情を整理していたんだと思います。


他の参加者の方の作品もどれも素敵で、言葉の選び方や発想力に驚くばかりでした。

今回私が個人的に好きだな、と思ったのはこれらです。

  • 切り取った小さな記事の小さな画一等光るきみを愛した
  • 透明なショーウィンドーの奥で君 笑ってるんだね 逃げてもいいよ
  • あなたをさ、まぼろしかもと思うのよ 同じシャツ着た少年の群れ
  • 何者でもない僕らの輪郭を縁どる蛍光ピンクの熱さ
  • 暑すぎる夏を削ってブルーハワイ もっと笑って実在青少年


次回のお題は乃木坂46だそうで、またこっそり参加させていただきたいと思っております。